ある街で仕事を終えて、ひっそりとした個人経営のカフェでコーヒーを飲んで、さて帰ろうと駅に向かって歩いていたとき、知らないおばあさんから突然声をかけられた。
よく聞き取れずに近づいて「なんですか?」と聴くと、「私はここに居ていいんでしょうかね」と言われた。
熊本の、どこか、都会ではないけれど広い道路のあるまちだったと思う。周りに人はおらず、私はおばあさんを目の前にして何秒か固まった。
すぐに、おばあさんより若い女性がやってきておばあさんを連れて行ってしまった。私はおばあさんに、小さい声で「いいと思います」と返したけど、そのやりとりがなんともえんげきみたいで、思い切って言い返せなかったし、なんとなくおばあさんの反応を見ることもできなかった。
一年くらい前のことなのに、ときどき思い出す。元気にしているかな、もっと大きい声で言えばよかったなって思う。