温泉に行きたい

どちらかといえば引きこもっていたいし、だれも傷つけたくないし、わたしも傷つきたくない。夜中に作るスープはやさしい味、昨日飲んだレモネードはとてもすっぱくて、今日のランチのステーキはしあわせの味だった。一緒に食事をする人がおだやかだととても安心する。そんな相手を、傷つけてしまう可能性をいつだって秘めているのがこわい。いや、意図せず傷つかれた経験が多いからそう思っているだけで、安心していられる相手は私に一度もそういう激しい感情をぶつけたりせずにいてくれている。かれらは、はじめからおわりまでそのままでいてくれるのだとおもう。だから、可能性のとても低いことに怯えていても仕方ないよ、と心をおちつかせる。いまある関係性のあたたかさができればこれからもずっと続けばいいな。と思う人が増えてうれしい。あとどれだけ渡せるだろう、とか、自分にできることはあるのかなとか思う。小さい時になりたかったものの話をまえしたが、15の時にわたしがときどきつぶやいていた夢は「早く大学生を終えたい」だったし、「お金持ちになって困っている近くの人を助けたい」だったことを思い出す。一体誰を救うつもりだったのだろう。きっかけは仲の良かった友だちの死なのかもしれないし、違うかもしれない。だがそれは、助けることにはならないんだよと10代の私に伝えたい。もちろんお金が人を救える可能性はとても大きいけれど、お金持ちになることでしか友達を救えないわけじゃないんだよ。それにまず君は人のことよりも自分のことを考えなさいよと説教したい。自分のことを考えるとしたら、やっぱり温泉に行きたいし、動物園に行きたいし、ゆっくり小説を読んで、次の計画を立て、戯曲を書き、納得のいく演出プランを組み、ナレーションの経験をもっと踏み、10年後を見据え、おじさんに評価されることを求めず、自分や、15歳の時に自分が助けたいと思っただれかを助けられたらいい。トリシュは俺だ、GIRLS TOO、みたいに重ねることはしないけど。私が救いたい15歳の私を救いたい。