洋館に住みたい

古い洋館に住みたい。古い洋館で演劇をして暮らしたい。お金のことを何も考えず、なにをしたいかっていうと、洋館に住んでできれば大きい犬とねこちゃんと一緒に楽しく暮らして、ときどきおいしいケーキを食べるとかサウナに行くとかお肉を買ってきて焼くとか そういうことをしながら本を書いて、家で稽古して、できたら家で公演したい。

半端な移動がつらい。体がもともと貧弱なので、さらに調子の悪いシーズンになると移動が本当につらい。だから家で完結でき、訪問客がいる方が私はうれしい。もちろん出かけるのもすき、だけど出かけてしまうと「いごこちのいいところ」をどうしても見つけるのが難しい、出かけるのはいごこちがよくない。出かけたときのマインド、とくに、SNSに載せる写真をとっているときの自分の精神、あんまりすきじゃない。自分だけの目で見たものを覚えていたい。本当は。

写真を保存できない頃に見たものの方がよく覚えているような気もしている。おもいきり移動したときの方がわたしはいきいきしていた。

ノイシュバンシュタイン城。ドイツの朝の霧だった川の景色。ピサの斜塔の階段のかたむき。スイスの山をロープウェイで登っていくときの窓の冷たさ。おおきな犬。いろんな種類のチーズといろんな種類のハムの朝食。ヌテラの甘さ。エッフェル塔。スリに怯えながら地下鉄に乗ったパリ。シャーロックホームズの博物館の蝋人形。パディントン駅というかわいいなまえ。アラビア工場。ヘルシンキ芸術大学の壁。大きな湖。芸術祭のにぎわい。蜂蜜屋さんのお姉さんと「もいもい」言い合って可愛かったなみたいなこと。バンクーバーで橋の上でバスが事故って船に乗って滞在先に帰ったこと。たまたま出会った日系のとても美しい老い方をした紳士と横に座って話したこと。考えだすと止まらない感じででてくるな。

ヨーロッパの思い出はみんなうつくしい。どれも10代の記憶で、覚えているということに価値があるきがする。記憶を変えているかもしれない。でも美しいものが見れたことはまちがいないなと思う。恋しい。恋しいから、旅行に行きたいし、だからこそもう行く必要がない気もする。

ずっと暮らして愛せるような家に住めたらいい。いいなと思うけど、具体的に考えるとその未来は遠く遠く、でもこうして書いているわけだからひょんなことから叶うかも知れないしね。洋館暮らし。

引っ越したら丸いダイニングを買って、真ん中に花瓶を置いて花を生けたい。書斎が欲しい。ベッドは大きいものがいい。暖炉があったら尚いい。飲めないけどワインセラーを持って、白ワインをちびちびと飲む。本を読む。そしておおきいソファでそのまま犬と一緒に寝てしまう。

なんてね。いいよね。