物件探しと窓辺のモクレン

2013年から今暮らしている場所に引っ越しして6年目に突入した。見学時白かった壁の色が入居時に突然オレンジ色になってた事件から始まり(それを戻しれもらった代わりにクローゼットはつけないと言われた)、換気扇が壊れる事件、お風呂の蛇口から謎の黒いもの出てくる事件など、築年数の長さからくる諸問題に対応しつづけて2、3年ほどで今の状態になった。

実家の家具はそのまま残してあるので、あたらしいものを用意して、一つずつ揃えていき、未完成状態を味わっていたのだが、去年「なんかもう、一旦完成してしまったのでは」という気持ちになってからは、ずっと引っ越し先を探して物件あさりを続けていた。更新も近づいていたし。

で、今日でた結論としては、このままの暮らしをもう少しつづけようかなあと思った。まだまだ不便はいっぱいあって、お風呂のお湯の調整が難しかったり、クローゼットがないから服をいっぱいは変えなかったり、まあ、いろいろあるわけだが、探しても探してもいい物件が見当たらないし(いいところはやたら高い。条件に合うとこは8〜10万円くらいする。なんとか、払えなくもないけど、福岡市の家賃相場からすると高いしなんだか勿体無い気分だ)今の場所への愛着が異常である、ということに気づいてしまった。

ちなみに、できれば次の家はお風呂の蛇口をひねると40度くらいのちょうどいいお湯が出て・トイレとお風呂が別で・寝室があって・キッチンもそこそこの広さで・壁が白くて・床も明るいか無垢材で・できたらIHで・洗濯機置き場が室内で・駅から近くて(体力がないので不安)・クローゼットがあって・日当たりがそこそこいい場所。っていうのを見ていると本当に高い。逆に、今、この部屋、やっすくないか…?とも思えてしまう。設備はあんまり綺麗じゃないけど、居心地も立地もめちゃめちゃよく、少なくとも今の生活にはとてもフィットしている。

それなのにどうして引っ越しを考えていたかというと、昨年末から「変えたがり」の気持ちが出て来て、自分にお金を使おう、とか、居心地をもっとよくしようとか、そういう気分が出て来てしまい、しかも一緒に働いている松木さんから「田村さん次は家賃二倍のところにお引越しね」という凶悪な脅しもされ(笑)まあ部屋も完成した気持ちになったので二倍とはいわなくとも次に行こうか、という思いが出て来ていた。あと無性に寂しくて猫を買いたがっていた。もちろん、上の条件をクリアしてお値段もそこそこな超いい物件に出会えたら引っ越したいきもちもまだ消えたわけではないのだけど。

加えて、昨年の終わりからはものすごく忙しかったのもあって、部屋の状態もあまりよくない時期が続いて(なぜか本当にすぐ散らかる)、愛着が失われていたのもある。あと自分はもしかするとかわいそうなんじゃないかみたいな気持ちに一人になるとなってしまい、環境を変えた方がいいんじゃないかと思っていた。

それが、だんだんと、相変わらず仕事はまだ山状態なのだが、すこし心に余裕が出て来たというか、ここ数日いろいろなことがあって自分が何を考えているか言語化できたことだったり、心の整理が(演劇でどうやっていきたいかが少し見えたり)ついてきて、ちょうどその頃に少し部屋を綺麗にして好きな花(いまの季節はやっぱりモクレンなんだよなあ)を活けてみた。

その日はとくになにも感じなかったのだけど、今日なんとなく、午前中曇っていたがそこそこ明るい窓辺にカフェテーブルを置きなおして、そこに大きな花瓶を置いてガラスの花瓶とモクレンを見たときに、なんだこの部屋は綺麗じゃないか、と思えたので、部屋探しを一旦やめることにした。もちろんきれいなのはモクレンなんだけど、それが存在していい部屋だったなあと気づけたというか。

それに、最近は、稽古でしょっちゅううちを使うので、人が通る回数も増えたのもよかったのかもしれない。もうちょっとここで思い出を貯めていけるんじゃないか、とも思って。

物件探しに何時間もつかっていたので、一旦そのループから抜けられると思うと少しホッとした。仕事はいっぱいあるから、それをどんどん片付けて行こう。そして部屋はきれいにして、ときどき花を変えよう。今日は土井善晴さんの本を予約したし、今年はいろいろな料理をしたり、いい器を見たりして、買うこともそれ以外のことも楽しみたいな。と思った。