エスカフローネと星合の空

(アニメの話しかしてないです。)

先日、赤根監督作品「天空のエスカフローネ」をやっと全部みて、劇場版も観て、しかし仕事をしながらだったので、二周目に入ろうとしている。アレン・シェザールさんがかっこよすぎたせいで(どことなく、ウテナの桐生冬芽さんに似ている…同時代だし)物語の筋が恋愛に寄っているような気もしたのと、終盤の風呂敷の畳み方がちょっと唐突に感じて「?」だったのだけど、人物設定の細かさとか、実はよく描かれている家族に対する葛藤とか、セリフの意図がぱっとわかりにくい部分まである気がして、一回じゃ汲めない。瞳の気持ちの揺れる根拠がわかれば、他の人たちのセリフも理解できるんじゃないかなとも思う。菅野よう子の音楽もすてき。

劇場版は…要素が90分ほどに凝縮されてわかりやすくなった「劇場版」で、確かにわかりやすかったし綺麗だったが、劇場版ウテナほどの力はなかったかなと思う。

思うに、同時代(94〜97)のレイアース、エヴァ、セーラームーン、ウテナ、そして今回のエスカフローネも含めて、このあたりの作品群、物語に細かい哲学が行き渡り過ぎていて恐ろしい。この頃活躍した幾原・赤根・庵野の3人はやっぱり超天才だと思うし、3者それぞれ今も作品を作り続けてるんだからすごい。

「ノエイン」だいすきおたくなので、中学生の時から何度もなんども観ているのだけど、赤根監督は「家族の闇」とか、産まれた時にもう持っている「不幸な運命」を描いている印象がある。あと、ノエイン・エスカフローネのラスボスとされる人物はかなり高い探究心・強い動機を持って、「仕組みを変えよう」としている。

今シーズンの新作「星合の空」、一話だけしか観ていないけど「家族の闇」と「不幸な運命」色が濃い予感がするのでちょっと怖い。「コードギアス亡国のアキト」ではノエインと近い設定で不幸な結末を超えたからさ、とか思いつつ、あれはあくまでも「コードギアス」であり、原作が赤根さんオリジナルでないから、など、、揺れる。(ジュリアスとスザクの描写はなんか、もう、おかげさまで…すごかったけど…。)

幾原監督も「不幸な運命」はよく扱っているけど、どちらかというとその運命を乗りかえる「仕組みからの脱出」イメージが強い。ウテナは、アンシーが客体から主体へ変わり、学園から去ることが「革命」だった。全員一緒の「卒業」ではなくて。あとはやっぱり「愛憎」「過去への執着」、最近は「つながり」「欲望」とかがモチーフになっている。イクニの描くラスボスは「社会の暴力」であることが多いと思う。

で、庵野さんは「破壊と創造」「エディプスコンプレックス」「命の価値」みたいなかんじ。ぱっとおもいつきの印象だから、明日には変わっているかもしれないけど。ラスボスは…碇司令と、、ゴジラ(を産んだ人間)……?

SF設定がない「星合の空」でこれから立ち向かうべくは、おそらくきっと強い動機を持った誰かでなく、「社会の暴力」になるんじゃないかと思うけど、未来からの使者もロボットも龍もいない世界でどんなお話になるんだろう。不安と期待と、な感じ。